こんにちは。最近仕事で採用を推進しており、採用関連の本を少しずつ読んでいます。
今回は「人を選ぶ技術」を読みました。この本は、面接等で直感的・主観的に行われがちな人を選ぶという部分を論理的に分析した本です。
今回も学びが多かったので、実践したいこと・覚えておきたいことをにまとめておきます。
- 人を見る全体像
- 地上1階「経験・知識・スキル」
- 地下1階「コンピテンシー」
- 地下2階「器=ポテンシャル」
- 地下3階「ソース・オブ・エナジー(エネルギーの源泉)」
- 人を見るにあたって気をつけるべき認知エラー
- 見る目を磨くためにできること
- 気をつけるべきEVILについて
- おわりに
人を見る全体像
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人を見るにあたっては、建築物のように階層として捉えると論理的に整理しやすい
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イメージは地上1階から地下3階まである地下深くにつくられた建物
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浅いほうほど他人から見えやすく、わかりやすく、そして変わりやすい。反対に、地下に潜れば潜るほど見えにくく、わかりにくく、変わりにくい
地上1階「経験・知識・スキル」
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地上1階は見やすく、わかりやすく、そして変わりやすい。相対的には表面的なものであり、履歴書から簡単に読み解くことができる。誰が見ても、誰が聞き出しても、比較的見間違わない。ただ、大半の面接がこの階層を見るだけで終わってしまっている
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地上1階だけを見て、全体を見た気になってしまっている例
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履歴書に「大ヒットしたあのビールの販売戦略を立てた」と書いてある人がいたとする。本当にその人が記録的セールスを生み出したのかもしれないが、その人はチームの一員で、上から落ちてきた販売戦略を実行しただけかもしれず、そこまではわからない
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地下1階「コンピテンシー」
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コンピテンシーは人事業界等でよく使われる概念・手法で、「好業績者の行動特性」と訳される
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コンピテンシーとは、その人が「どんなシチュエーションで、どういうアクションを取りがちか」という、固有の行動のパターン
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人間は似たようなシチュエーションで同じ行動を繰り返すため、コンピテンシーがわかると、相手の「将来の行動」(つまり自社でも活躍できるかなど)を予測できる
- コンピテンシーの分類
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「成果志向」
- 低レベルの人:「難しいとやめてしまう」
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中レベルの人:「絶対にやり遂げ、目標はなんとか達成しようとする」
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高レベルの人:「目標は越えることが当たり前で、そのための動きが早期から逆算でき、目標超えの結果を繰り返してナンボと考える」
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「戦略志向」
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低レベルの人:「自部門の戦略を立てることはできる」
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中レベルの人:「自社全体の戦略を策定できる」
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高レベルの人:「業界や産業全体の戦略を立てられる」
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「ビジョン達成のためにどんな方法を取るのか?」「他の人たちと違うやり方をするのか?」「独自の道を見出すのか?」「競争上の差別化要因をどうやって作っていくのか?」のような質問で、具体的な中身の高度さ、緻密さを探る
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「変革志向」
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物事を変えてゆく志向
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「現状打破のために何をすべきか?」「変化の方向性はどのようなものであるべきか?」「どうすれば、人々が熱狂して変革に取り組めるか?」のような質問で探る
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コンピテンシーを見抜く方法
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「エピソード・ベースのインタビュー」が有効。相手の「意見」ではなく「取った行動=ファクト」にフォーカスする
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例えば、候補者が前職でお客様と関係がこじれてしまった経験があった時、どのようにして問題を解決したのか、リアルなエピソードを聞いていく。 「そのとき、あなたはどのようにして問題を解決しましたか?」と聞いて、出てきたエピソードが、「仲間と協働して人間関係で問題解決した」なら、「協働」「チーム」関係のコンピテンシーにつながりそうだなと認識して深掘りしていく。「計画を見直して根本的に再発を防いだ」ということなら、「戦略」「変革」あたりのコンピテンシーが高そうだとあたりをつけ、評価していく
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見極る際の重要な注意点としては、先にエピソードありきで、それをコンピテンシーに仕分けること。逆のやり方をすると失敗する。 「あなたは戦略的ですか?」「戦略思考を示すエピソードを話してください」このように尋ねれば、相手は必ずそれに合わせて話をしてくる
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知りたいコンピテンシーに関わる物が出てきた際に、次のような質問を重ねて深掘りしていくことが必要。 「ちょっとそこ、もう少し教えていただけますか?」 「具体的にはどうやったのですか?」「あなたは、そこで何をしたのですか?」「あなたが、その成功のために工夫したことはなんですか?」と切り込み、主体的な関与の姿をあぶり出す
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エピソードから入る面接の本質的なメリットは、「事実=ファクト」のみを、純粋に抽出することができること。例えば、チームマネジメントについて聞きたい場合、「あなたの理想のチームマネジメントスタイルは?」と聞いてしまうと、「ひとりひとりをエンパワーして、みんなの力が、10から100になるようなチームをつくることです」のように、単なる「意見=オピニオン」を聞くだけで終わってしまう可能性がある。しかし、「チームマネジメントでうまくいったときの話をしてください」と突っ込んで聞けば、意見ではなく事実を話すしかなくなる
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(自分の感想)
自分が面接を行う時にも、過去の経験を深掘って自社でどんな活躍をしてくれそうかを意識して見ていたが、「コンピテンシー = 行動特性」と整理するとすごく理解しやすいと思った。
「ファクト」に注目しないとコンピテンシーを見抜くことができないというのはその通りだと思う。特定の領域について確認したいときなど、コンピテンシーありきの質問をしてしまうことがあるので、ここは特に意識しておきたい。
地下2階「器=ポテンシャル」
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地上1階の経験・知識・スキルや、地下1階のコンピテンシーは、どちらかというと、学習と体験を通じて形作られ、変化していくもの。いわばコップに注がれる水で、地下2階の「器=ポテンシャル」は、コップそのもののように、それぞれ大きや、形が違う。つまり、コップの大きさがその人の「器」であり、注がれる水が「経験・知識・スキル」「コンピテンシー」。そして、その差分のさらに注ぐことができる水の量が、「伸びしろ」である。
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人の器の大きさ、伸びしろは、次の4つの因子で測ることができる
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ポテンシャルの因子① 「好奇心」
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好奇心が実は優性因子である。他の3つの因子をある意味では母親のごとく「育くむ」ものとイメージしたい。もし何か一つだけを見ようとするならば、この好奇心。色に例えるとすれば赤色。新しい経験、知識、率直なフィードバックを求めるエネルギーの強さと、学習と変化への開放性がこれにあたる
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ポテンシャルの因子② 「洞察力」
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洞察力は色に例えるとすれば青色だ。新しい可能性を示唆する情報を収集し、理解するエネルギーの強さを指す
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ポテンシャルの因子③ 「共鳴力」
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共鳴力を色に例えるならば黄色。感情と論理を使って、自身の想いや説得力のあるビジョンを伝え、人々とつながろうとするエネルギーの強さを示す
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ポテンシャルの因子④ 「胆力」
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胆力は色に例えるなら。個の強さを持つ黒色。大きなチャレンジがある課題を好み、困難な目標に向かって戦うことに強いエネルギーを得て、逆境から素早く立ち直る力を持つことを指す
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地下3階「ソース・オブ・エナジー(エネルギーの源泉)」
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その人の精神性。ヒリヒリするような頑張りを生む力。それは、「使命感」であり、また、「劣等感」だと考える
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「使命感」はエネルギーの源泉となり、各階層のそれぞれの因子の発達において、加速合成をもたらす。例えば、医学の道を志す人の動機として散見されるのが「子どもの頃に家族を不治の病で失ったので、自分がいつかその病気を治したい」という使命感。このように使命感は、ちょっとやそっとのことでは揺るがない強固な精神性をその人物に授ける働きがある
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「劣等感」というものは、ネガティブな意味で使われるが、人の成長という観点において、劣等感も使命感と同じく、その人の人生の発展にプラスに働くポジティブなものである。筆者は、劣等感が「ソース・オブ・エナジー」として確率変動を生み出していたとしか考えられない経営者を数多く見てきた
(自分の感想)
「ポテンシャル」「ソースオブエナジー」といった深い階層を面接で見抜くのは、自分にはまだ難しそうな印象を受けたが、こういう階層があると知っておくことで人のことを理解しやすくなると思った。
人を見るにあたって気をつけるべき認知エラー
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ハロー効果
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一部の特徴的な印象に引きずられて、全体を評価してしまう心理現象
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学歴(職歴)差別とハロー効果は結びつきやすく、発動しやすい。例えば、学歴(職歴)が物足りない人に対して、相手から少しでもネガティブな一面(特徴的な印象)が見つかったときに、それが大きな影響を与え、他のポジティブな面を覆い隠してしまう
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確証バイアス
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無意識のうちに自分の意見や仮説を支持するような情報を優先的に探してしまう現象
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これの怖いところは、いったんダメだと感じたら、知らず知らずのうちに、その印象を追認する情報を集めてしまうところ
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親近感バイアス
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似たもの同士を高く評価してしまうというバイアス
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例えば、ものすごく胆力の強い面接官は、やはり胆力の強い人を素晴らしいと言いがちである。同族をひいきするのである。逆に違うタイプの種族を厳しく見ることがある。
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(自分の感想)
どれも割と心当たりがあってギクっとした。
こういう認知エラーがあると知っておくことで、ある程度は補正できるものだと思うので知ることができてよかった。
見る目を磨くためにできること
- この人は素晴らしい、すごい成功者だ、というような人に会ったときには、この人は何がすごいのか、ポテンシャルのどこが高いのか、それに対して自分はどの位置にいるのかを洞察するといい
気をつけるべきEVILについて
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EVILとは、表向きは善人の顔をしている。罪を犯すわけでもないし、モラルに反してもいない。しかし、周りに大きな悪影響を及ぼす、害を与える。そういう「無自覚な悪意」がEVIL
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EVILは、周りの人のパフォーマンスを落としたり、関係した人が会社を辞めてしまったり、さらに心に大きなダメージを受けてトラウマとして残ってしまったりすることもある
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なぜ人を見る際にEVILの存在を理解しておくべきか、そして避けるべきか。それはひと言で言うと、「能力が高い・低い」を見分けるだけでは不足しているため
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優秀なEVILは、優秀なだけに、悪意が分かりやすい形で発露せず、一見しただけでは善人と思われやすい。かつ、仕事ができたりコミュニケーション能力も高かったりする。そのような人が結果を出すことで、短期的には利益が出るが、中長期的には大変なマイナスとなる。EVILな人による損害(周りの人間が辞める、コンプライアンス違反が明るみになり得意先や社会の信用を失うなど)を回復、改善するためには、EVILな人によって得られた利益の何倍もの時間と労力が必要となるとされている
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優秀なEVILは「マウント型」と「ナルシスト型」の二つに大きく分けることができる。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございます。
コンピテンシーの見抜き方など、すぐに実践できるところも多かったので早速実践していきます。
本書の中では具体例などが豊富にあってとても理解しやすかったので、ご興味ある方は是非本書をご覧ください。